奇跡の脳
ー脳科学者の脳が壊れたときー ジル ボルト テイラー著
これは脳科学者である ジル ボルト テイラー と云う著者の体験談です。
テイラー博士はハーバード医学校で脳と神経の研究に携わり全米精神疾患同盟の理事などを務めて活躍していましたが、37歳のときに突然脳卒中に倒れました。
この本の始めには、左半球の出血により4時間のうちに情報処理能力が完全に衰えていく様子、それに抗って残っている思考力でどうにか掛かりつけ医に連絡を取ったことなどが描かれています。
著者は ”一人でも多くの人が「脳卒中の朝」の章を読んでこの病気の兆候に気づき、遅きに失することなく、すぐに助けを呼んでくれれば、10年近くにわたるわたしの努力も報われることでしょう”と執筆の動機を書いています。
そして後半では回復について述べています。
もしあなたが、脳卒中や他の種類の脳障害にかかった人をご存知なら、回復について述べた各章は、図り知れない価値のある情報源になることでしょう。
と述べ回復の様子を詳細に語っています。脳卒中になっても必ず回復できると云う実例を知る事は大きな励みになる事と思います。
著者は左脳が働かなかった間、とても心地よい深い安らぎを感じていたそうです。
脳に障害を受けている時、本人が安らぎを感じていると知る事は周りの人間の救いになります。
右脳だけが働いている体験をしたお陰でテイラー博士は
言語を失ったり、あるいは他人と普通の方法で意志を伝え合う能力をうしなった人は、一体、どんな新しい発見をし、どんな別の能力を身につけたのでしょう? 他の人と違ったり、あるいはもはや正常でないと見なされた人を気の毒だとは感じません。中略。そういった人の独自さに惹かれ、意味のある結びつきを持ちたいと強く思うのです。たとえそれが目と目を合わせたり、優しく微笑んだり、ちょっと触れたりするだけのことでも
と同じような状況にいる人たちと通じ合えるようになったようです。
著者はまた右脳の働きで”エネルギーを与えてくれる人”と”奪うだけの人”を区別したそうです。これは赤ちゃんや動物が他人を判断する際の私たちが「本脳」と呼んでいる物と同様な働きではないでしょうか。
こんな大変な状況からテイラー医師は8年という年月と並外れた努力の成果で左脳の機能を回復し専門職として復活しました。
人間の脳の美しさ、たくましさを教えてくれる貴重な体験談です。





